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【2019年5月号】伝統と革新

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 ≪目次≫ 
       
 01:[ ご挨拶] 今月の社長メッセージ
 02:[ コラム] 必要な場所で使える水を

【ご挨拶】
 伝統と革新        取締役社長 三木康弘

 令和の新時代がスタートし、すべてが新鮮に感じるこの頃です。津々浦々で田植えも終えて、地域によっては梅雨入りの知らせも聞こえる頃となりました。皆様にはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。

 今年は新たな天皇がご即位されたことに伴い、様々な行事が予定されています。今般は、令和初の国賓として米国トランプ大統領をお迎えしました。大相撲の観戦や表彰も初との事で、多様な日本の歴史と伝統に触れられると共に、新たな事跡を刻まれることとなりました。

 一方古代より変わらない儀式として、即位礼正殿の儀(御即位を公に宣明されるとともに、その御即位を内外の代表がことほぐ儀式)が10月に、続く11月には国民の安寧などを祈る一世に一度の「大嘗祭(だいじょうさい)」が行われる予定です。例年はその年の新穀を天皇が神に捧げ天皇自らも食す祭儀でありますが、大嘗祭には特別な意味が込められ特別なお供え物が調進されます。

 徳島では、30年振りにその祭儀に欠かすことのできない「麁服(あらたえ)」と呼ぶ大麻の反物の調進に向けて準備を進めています。麻畑に苗が植えられ、秋には茎をすいて繊維を作り、機を織ります。三河(愛知)の絹織物「繪服(にぎたえ)」と並んで古来より続く阿波忌部族が担う神事であり、平安前期の『貞観儀式』や『延喜式』に詳細な記録があります。県西部の旧麻植郡と呼ばれる豊かな山河に囲まれた高地が麻の栽培地に選ばれ、現在も存続している稀有な伝統です。麻は和紙や特殊紙の原料としても重宝され広く使用されていますが、日本での栽培はその毒性から厳しく制限されている植物でもあります。様々な分野で欠かせない天然繊維ですが、止むを得ず合成繊維が代用されていたりします。

 世の中が変わりゆく中で、伝統や慣習を変わらず維持していく事は大変難しいことでありますが、継続の努力によってその価値は益々磨かれ、高められて引き継がれていきます。そして原点にある始めた時の思いを知る事ともなり得、とても大切なことと思っています。

 当社においても創業以来の古い施設や支えてきた設備は、老朽化とともに順次廃棄され新たな設備に置き換わって来ましたが、一部はモニュメントとして展示して往時をしのばせてくれています。また創立記念日には稲荷神社祭を行い、安全と発展並びに社員の幸福を祈り誓いを立てていますが、そこからは創業時の将来に想いを馳せる姿が思い起こされて来ます。あらためて歴史を紐解き設備一つの歴史さえも丁寧に書き留めていく事で、先人に感謝し、ご苦労を生かし次世代に繋いでいく決意を持たせて頂きました。

 新たな時代を、伝統と革新をもって、切り拓いてまいります。
変わらぬご厚誼を宜しくお願い申し上げます。

【コ ラ ム】
必要な場所で使える水を      執行役員メンブレン事業部長 矢野 勝彦 

  当事業部は、その名の通り分離膜関連の事業を推進する部門です。お客様が分離膜を製造する際の基材としてポリエステル100%の湿式不織布であるブランド名「PURELY」(ピュアリー)を事業展開しております。

 また、当社で分離膜を製造し廃水処理プロセスに利用できる装置に組み上げ、MBR用浸漬膜ユニット『M-fine』として市場展開しており、事業セグメントとしては、水処理関連資材の事業を担っております。

 先般京都方面に出張した際に気付いたことがあります。当社が位置する徳島より京阪神方面に出張する際には高速バスが便利なのでよく利用するのですが、淡路島にあるサービスエリアにトイレ休憩で立ち寄った時のことです。まず驚いたのは、トイレの入り口が自動ドアであったことです。さらに中に入るとホテルのトイレと見紛うばかりの木目調の壁面と磨き上げられた床面があり、清潔感にあふれ利用者にとっては快適そのものです。まさに国土交通省が提唱している快適トイレ仕様とはこのことなのかと思った次第であります。更に水は再利用されている旨標記がありました。
 短時間の停車時間の為、これ以上の観察はできていませんが、その日の帰りに兵庫県の明石大橋のたもとの舞子というバス停から帰り便に乗る際にも、バスターミナルのトイレが同様に快適トイレ仕様になっておりました。

 これは、観光庁が推し進めている訪日外国人旅行者環境整備事業の一貫ではないかと勝手に思った次第です。と申しますのも当事業部では、MBR用浸漬膜ユニット『M-fine』を利用し、廃水処理プロセスを1パッケージで完結させた小型廃水処理装置の事業展開を計画しており、その用途として独立水循環型快適トイレの商品化を目指しているためです。現在、実証試験装置を当社工場内に設置し実証試験を4月より開始しました。当実証装置は、分離膜を利用した水の循環利用と再生可能エネルギーにより、水道、下水道、電気などのインフラに接続することなく完全に独立して稼働できることを確認する目的で設置しました。

 商品化に当たっては、快適トイレと廃水処理装置をパッケージし、移動して設置するだけですぐ使用できる事や、常設としても使用可能な品質をもった商品に仕上げたいと思っております。

 人間ひとりが使用する水の量は、1日当たり250L~300Lといわれております。しかしこれは人が水として直接使う量であり、更に世界的な水需要を考える場合は、食品や製品の生産や流通過程で消費・汚染された水量を表す『ウォーターフットプリント』という指標があります。食品や製品が、最終消費者に届くまでに多くの水が使用されており、消費者は間接的に水を消費・汚染したことになります。具体例としては、牛肉1kgは16,000L、Tシャツ1枚 2,700L、乗用車1台 65,000Lという数字が計算されておりますが、当指標は、消費者が製品を消費することで生産地において、これほどの水の量を間接的に消費・汚染している事を自覚し、水資源の持続的な活用や節水意識へと結び付ける指標として活用するよう提唱されております。特に、人口増加や経済振興により、ウォーターフットプリントの比率が高い生産地など、水を必要としているエリアや国で使える水がないのが実情であります。

 当事業部は、水環境業界の一端で事業を行っております。今後も『PURELY』や『M-fine』などの商品展開を通じて、『必要な場所で使える水を』を基本姿勢として、常にウォーターフットプリントを意識しつつ、微力ではありますが水資源の循環活用に貢献してまいります。